『マイクロスコープを臨床応用した、痛くない歯ぐきの移植法あります』
下がった歯ぐきを改善する治療に上皮下結合組織移植術を用いる方法があります。
口の中の天井にあたる口蓋から組織を採取して、下がった歯ぐきの部分に移植する治療方法です。
20年ほど前に、アメリカの有名な歯周病の先生のコースに出たことがあり、豚の頭部で練習をしました。練習中、実際に口の中でされたら痛いし、出血も多いだろうなと想像できたんです。
怖がりで痛がりの僕は道具だけ揃えて、実際の治療には応用しませんでした。
開業して数年経った時の話です。矯正専門医による矯正治療が終わった当院の歯科衛生士Aの下顎前歯部の歯ぐきが、大きく下がってしまいました。海外留学帰りの歯周病の専門医がいるから治療を受けて欲しいと強く勧められ、彼女は受けることになりました
僕もせっかくの機会だったので、見学させて頂くことにしました。
まさに豚の頭で練習していた方法で、術後出血や痛みが強いだろうなと見学しながら思っていたら、やはりそうなってしまいました。僕が運転手で、もう一人歯科衛生士Bが同行していたんです。血が止まらないので、その衛生士Bに口蓋の出血部位を圧迫止血してもらいながら生月に戻り、診療室を開け、1時間ずっと押さえ続けようやく止まりました。
それでも翌日まで出血は続き、疼痛も1週間以上続きました。かなり痛い思いをしたのに、肝心の歯ぐき下がりは、さほど改善しなかったんです。その結果を目の当たりにして、患者さんに苦痛を与えてまでする治療ではないと、当時は思いました。
2014年の4月、歯科医師人生を変える出会いがありました。山梨の秋山勝彦先生です。初めて講演を聞き、こんな治療をできる先生が世界にいたんだと衝撃を受けました。
全ての診療を手術用顕微鏡マイクロスコープを用いることで可能だと知りました。秋山先生が開発された痛くない上皮下結合組織移植術があることも。それは、MATIペリオスペシャリストコースという特別なコースを卒業すると、できるようになるとわかりました。すぐに九州の西の端から通うことを決意しました。
それからが長い道のりでした。すべての診療にマイクロスコープを使うので、一つでは足りなくなります。歯科衛生士達も取り組みたいとなり、結局4つの診療室すべてに導入しました。
研修会費、旅費、設備投資費、同業者からはアホだと思われるぐらいの先行投資を行いました。
コロナも重なり中断があったため、2021年9月に、ようやくペリオスペシャリストコースを卒業しました。卒業後、少しずつ治療に取り組み、現在は月にお二人ほどのペースで行っています。僕自身も2023年3月に横浜の先生との相互オペ実習で、側で秋山先生に直接指導を受けながら経験しました。
本当に痛くないし、術後出血もありませんでした。
この投稿を読んでくださった歯ぐき下がりで悩んでいる方には、このような治療法があると知って欲しいです。また、僕よりも若い歯科医師の先生方に、修練を積み取り組んで欲しい治療です。
ご興味がある先生、11月横浜でお待ちしております。
本日も皆さまと共に、良い一日です。